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八十路の豊島三十六景 製薬会社相談役・渡辺さん、池袋三越で展示会

(2007/09/22付 朝日新聞都内版 朝刊)

豊島区内に残る情緒あふれる町並みを描いた水彩画の展示会が、池袋三越(豊島区東池袋)で開かれている。作者の「池八十次(やそじ)」はペンネーム。実は製薬会社相談役の渡辺進さん(85)だ。60歳から絵を独学で学び、作品が地域のミニコミ誌に3年間連載された。当初は体力の不安もあったが、描く題材探しのために区内を歩き回り、「足腰が強くなった」と話す。(から崎太郎)

今回展示されている絵は36枚。雑司が谷旧宣教師館(雑司が谷1丁目)や染井霊園のさくら並木(駒込5丁目)などで、ドローイングペンと水彩絵の具で描かれている。「豊島三十六景」として区内の情報を掲載する月刊誌「池袋15'(じゅうごふん)」に04年8月〜今年7月連載した。

「持田製薬」の社長を務めてきた渡辺さんは60歳の頃、絵筆をとった。それまでは「展覧会を見るくらい」で、本格的に描くのは初めて。名画を模写したり、街で絵を描いている人の技を盗んだりしていた。八十路(やそじ)に入り、所属する「東京池袋ロータリークラブ」の会報などに掲載されたカットが「池袋15'」の発行者の目にとまり、コラムの依頼が舞い込んだ。

年齢と体力に不安を感じて最初は辞退したが、何度も頼まれるうちに「老年期の生きがいになるかもしれない」と思い直して引き受けた。  ペンネームを使ったのは「途中で休載したり、やめたりしても会社に迷惑をかけることのないようにするため」だ。

一つの作品を描くために、週末を利用して最低3度その場所に通った。名所だけではなく、急傾斜で知られる「高田のぞき坂」(高田2丁目)やビルが乱立する池袋駅付近など、普段何げなく通り過ぎそうな場所でも、自分がいいと思った場所を描いた。描く場所を探すために区内ほぼ全域を歩いたという。

絵につける解説文を書くために、その場所の歴史を郷土資料館などで調べた。「おかげで足が丈夫になり、描いた場所を案内できるくらい精通した」

老年期を迎える人々には「何歳になっても、やればできるということを知ってほしい」と話す渡辺さんは、しばらく休憩した後、今年中に連載を再開し、豊島区に隣接する文京区などの風景を描く予定だ。

「豊島三十六景原画展」は24日まで、池袋三越3階「イベントサロン」で。入場無料。問い合わせはエスコミュニケーション(03・3984・7391)へ。