2022年06月07日
週刊朝日「Challenge 2022」掲載
㈱トランスアクト
橘 秀樹 社長
社長、国会議員、医師、トップアスリート、芸能人―。株式会社トランスアクトから派遣されたドライバーの後部座席に座るのは、これらの超富裕層だ。要望は多種多様で、サービスへのこだわりも強い。 派遣されるドライバーはおのずと、あらゆる状況でも臨機応変に対処できる高度な「運転技術」を持ち、守秘義務、指示命令の厳守はもとより誠実な「接客マナー」、そしてカーナビにも勝る「地理知識」を兼ね備えた選りすぐりの人材ということになる。
「お客様との信頼関係ができてくると、ご家族の送迎はもちろん、中には高齢の方の介助まで担うドライバーもいます。ここまでくるとビジネスを超えたパートナーです。一方、弊社は秘書の派遣も行っています。両職種を手掛ける同業他社を私は知りません」(橘秀樹社長) 派遣の際には顧客のニーズを聞き出し、相性も考慮して最適なマッチングを心がける。この微妙な差配が超富裕層に喜ばれ、ファンを獲得している。誰もが真似のできないコーディネート力の訳は、橘社長の経歴を聞いて納得がいった。
橘社長は元代議士秘書だ。大学を出て、外務大臣などを歴任した大物議員に仕えた。常に分刻みの対応を迫られ、神経を擦り減らす日々が続いたが「苦しさ49%」、世の中が動く現場を目の当たりにする「楽しさ51%」で、かろうじて続けられたという。獨協大学ヨット部で鍛えあげた、頑健な体と強靭な精神力もそれを支えた。 周囲に気を配りながら常に先を読んでの行動。それを繰り返すうちに、言われる前に相手の求めるところを察する力、また人を見る眼力が身に付いていった。
2人目の代議士に仕えていた時、一度は決まりかけた地方議員への立候補を断念。それを機に秘書も辞め、政治の世界からは身を退いた。フリーター生活を送る中、知人から役員専属ドライバーの仕事を紹介された。秘書時代は代議士を乗せて、どこにでも車を走らせたから腕には覚えがあった。やってみると「まさに天職でした。この仕事で自分の理想の会社をつくりたいと思うようになりました」。
採用に当たっては面接や運転チェックはもちろんのこと、応募書類の封筒から履歴書の文字、電話での話し方など様々な角度から吟味していくという。 「ドアの開け方は指導できますが、開けるタイミングはセンスです。そこを丹念に見極めます」(橘社長) ドライバーのことも秘書のことも、エグゼクティブの気持ちも知り尽くした橘秀樹率いるプロフェッショナル集団、トランスアクト。我々も一遍くらいは乗ってみたいものだ。
【会社データ】 本社=東京都港区芝公園3-4-30 32芝公園ビル702 ☎=03-3433-8200 創業=2013年4月 事業内容=人材派遣業 派13-306084 https://transact.co.jp/
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