220607 田中水力㈱/梅村 賢二 社長

2022年06月07日

サンデー毎日「会社の流儀」掲載

創業90年。今こそ「小水力発電」の出番‼
百年稼働し続ける小水力発電プラントを一貫提供

田中水力㈱

梅村 賢二 社長

 山紫水明の美しい国土を誇る日本。先進諸国の中でも日本は、豊富な水量と国土の高低差を利用した水力発電に、最も適した地理的優位性を持つ国と言える。とはいえ、ダム建設が必要な大規模水力発電プラントは、それによる環境破壊と莫大な建設コストの観点から、今以上の新規増設は望むべくもない。

 そこで今見直されているのが、流れる水と一定程度の設置スペースさえあれば、どこでも電気を生み出すことが出来る小水力発電だ。中小河川や農業用水路、上下水道施設、ビル施設など、小さな水流であっても比較的簡単な工事をするだけで発電出来ることから、地方自治体や企業の関心も高く、導入が進んでいる。

 近年では、大手電力会社においても、多目的ダムや治水ダム、発電用ダムの河川維持放流(下流域の生態系・環境を維持するための放流)の際の流水を生かした小規模発電所の設置も進んでおり、まだまだ小水力発電設置に適したロケーションは尽きることがない。

 2020年10月の日本政府による「2050年カーボンニュートラル宣言」の発出以降、益々注目が集まる小水力発電のフィールドで、1932年7月に田中水力機械製作所として創業以来90年間、小水力発電一筋に事業を継続し、小水力の灯を点し続けてきたのが今回紹介する田中水力株式会社(梅村賢二社長)だ。

「確立した技術」を超える
チャレンジ精神が漲る

 梅村社長の母方の祖父にあたる創業者の故・田中茂氏は、東京電燈(東京電力の前身)に勤務後独立。発電用水車の新製・改造・修理を行う専門メーカーとして事業をスタートさせ、やがては水車の保守・修理のみならず、小水力発電プラントの機器選定から設計・製造・組立・現地据付工事・性能評価・メンテナンスまで一貫して手掛ける総合メーカーへと発展していく。その過程で、水車の回転数を一定に保つための「調速機」という重要な装置を日本で初めて開発するなど、我が国の水車の歴史を紡いできた立志伝中の人物だ。

 当初は渋谷区笹塚の地に工場を構え操業していた同社は、火力発電や原子力発電の隆盛などエネルギー事情の変遷に伴い、不遇の時代も経験した。1991年には笹塚工場を引き払い神奈川県座間市に移転。2014年の相模原市への移転を経て18年、事業再構築が軌道に乗り現在の厚木市の本社・工場建設に至る。

 その間、2005年5月には小水力部門を分離独立し、現在の田中水力㈱を設立。この頃から新エネルギー活用の機運が兆し始め、12年の「再生可能エネルギー固定価格買取制度」の運用開始で小水力発電への需要が高まり、同社復活への道を本格的に辿り始める。

現地据え付け工事の様子

 梅村社長は意欲を語る。
「水力発電には100年を超える歴史があり、『確立した技術』と言われますが、小水力発電には更なる発電効率の向上や高落差の水流の活用など、まだまだ未開拓の技術分野はある筈。当社には、入社以来不遇の時も、小水力発電の灯を点し続けてきた技術本部長を筆頭に、その技術を引き継ぐ若手技術者も続々と参加しており、今後とも、より有益な技術課題に挑戦していきたい」

設置環境に最適な機器選定
長年の蓄積が生きる対応力

 前述の技術本部長を始めとする同社開発チームは2014年、山形県・天童量水所からの依頼で既存水道施設への発電用水車の設置に着手。現地の限られたスペースでは従来の横型インライン水車の設置は不可能で、これまでの常識を覆す「横のものを立てるという発想」で、世界初の「立型インライン式フランシス水車」を考案。見事完成・設置に成功し、今も元気に電気を作り続けている。

インライン式フランシス水車(左)、渦巻フランシス水車(右)

 この業績が評価されて同社は、「平成27年度新エネルギー財団会長賞」を受賞。その他にも09年の経済産業大臣表彰や11年マイクロ水力開発賞、15年ターボ機械協会賞技術賞など、同社のモノづくり魂を象徴する受賞歴は枚挙に暇がない。
 小水力発電用の水車には設置場所の環境によって様々な方式があるが、同社はそのほとんどに対応する。

 世界で最も使用頻度が高い「渦巻フランシス水車」に始まり、省スペース化が図れる「インライン式フランシス水車」、機械の価格が安価で据付・運転・保守が容易な「クロスフロー水車」、流水をノズルから噴出させて羽根車を回転させる「ベルトン水車」など。そして最後に「ターゴ水車」。軽負荷での稼働率が高く、メンテナンス面でも極めて優位性があるターゴ水車の初の国産化に成功し、12年に富山県の小早月発電所に納入。国内でターゴ水車を供給できるのは同社のみだ。

ベルトン水車(左)、クロスフロー水車(右)

 現在同社が注力するのは河川維持放流時の流水を電気に変える1000kW程度の小水力発電プラントを含め、5000kWクラスまでのプラント、そして新しい技術へのチャレンジだ。
「大手電力会社からの受注は、5~10年掛かりの長期戦。一昨年には戦略コンサルファーム出身の次男を後継候補の営業員として呼び戻し、後顧の憂いは無くなった。今後は脱炭素社会を推進する新戦力を更に迎え入れ、果敢にチャレンジを重ねたい」
 と、梅村社長は70歳にして尚、意欲旺盛だ。

ターゴ水車。機構内部には堅牢な羽根車が。

【会社データ】
本社=神奈川県厚木市上古沢御子ケ谷255-4
℡046-281-9801
創業=1932年7月7日
設立=2005年5月27日
資本金=5000万円
社員数=66名
事業内容=発電用水力プラント一式の製造・販売・設置工事請負、既存設備のオーバーホール・定期点検等
http://www.tanasui.co.jp

 

サンデー毎日「会社の流儀」/田中水力㈱
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