2022年08月09日
週刊朝日「CHALLENGE 2022」掲載
㈲協和合金
松本 修一 社長
シリンダーをアルコールランプで熱し、フライホイールを少し回してやると、後は勝手にピストンが上下動を繰り返し、フライホイールが回転し続ける。 下の写真のミニチュア版「スターリングエンジン」は、加熱・冷却による空気の膨張・収縮を利用して駆動する夢の外燃機関で、その機構は、1816年にスコットランドの牧師・スターリングによって発明されたものだ。現存する熱機関の中でも、熱エネルギーを動作に変換する熱効率が良く、温度の高低差で作動するシンプルでエコなエンジンだと言われている。
その原理が解るミニチュア版を開発・製造し、自社の精巧なダイキャスト鋳造技術を証明しているのが、1957年創業のダイキャスト製造会社、有限会社協和合金(松本修一社長)だ。 上下動を回転に変える機構部品を触らせてもらったが、その滑らかな動きは惚れ惚れするほどで、メカ好きには是非手に取って眺めてみたい逸品と言える。
同社では、その組立キットをネット通販で販売。社内で一度組み立て動作を確認、再度分解したものだけに、品質は折り紙付きだ。ある工科大学付属高校では、モノづくりの教材として毎年1人1台購入されるほか、「宇宙でも動く」エンジンとしてNASAにも商社経由で納入していると言う。
「スターリングエンジン」の組立キット
2代目となる現代表・松本社長の生まれ年、1957年に松本ダイカスト工業所として創業し、83年9月に現社名で法人化した同社は間もなく設立40年目を迎える。子供の頃から父親である先代社長の仕事振りに身近に接し、モノづくりの楽しさを体得した松本社長は中央大学卒業後同社に入社。自らも試行錯誤を重ねながら技術を磨いてきた松本社長は2009年、同社独自のダイキャスト製法「3CDプロセス」を編み出す。
これは、CAD/CAM/CAST/DIRECTの略で、金型設計から製作、ダイキャスト鋳造を自社内で一貫生産し、特殊型素材と長年の鋳造ノウハウを組み合わせることで、従来困難だった圧倒的短納期と簡易金型による小ロットのダイキャスト鋳造を可能にした合理的プロセスだ。 試作時と量産時の製法の違いにより発生する不具合を根絶するこのプロセスを活用して同社は、他のモノづくり企業の製品開発の技術サポートも行っている。 サポート先企業からは、「試作を繰り返す余裕のない我社にとって大助かりです」「全工程を熟知しているからこそ可能なプロセスで、頼りになります」との声が寄せられていると言う。
モノづくりを学ぶ高校生に、不定期で「オープンファクトリー」も行っているという同社。モノづくりへの情熱は冷めない。
【会社データ】 本社=埼玉県川口市東本郷787-6 ℡048-285-3991 創業=1957年 設立=1983年9月 資本金=1000万円 事業内容=ダイキャスト設計・製作、鋳造・加工等 http://www.kyowa-gokin.com
株式会社光英科学研究所 乳酸菌生産物質
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