東京、千葉、埼玉、神奈川で10カ所の保育園を運営し、2024年には創立40周年を迎えるチャイルドタイム。厚生労働省の発表（2023年）によると全国には39,589カ所もの保育所等があるが、チャイルドタイムには創立以来、多くの保育所とは異なる特長が２つあった。
　一つは、モンテソーリ教育を実践する保育所であるということ。これはイタリアの女性医師マリア・モンテソーリ（1870年～1952年）が考案した教育法で、幼児教育に革命をもたらしたと言われている。彼女はユーロに移行する前の1000リラ紙幣の肖像画でも有名で、ノーベル平和賞の候補にもなった。
　子どもの自主性を尊重し、一人ひとりの個性を伸ばす――これがモンテソーリ教育のエッセンスだ。子どもに尊敬の念を持って接することも忘れない。指示を出す時には大きな声を出したりはせず、一人ひとりに届く声の大きさで話しかけるなど、立ち居振る舞いには細心の注意を払う。

「お絵描きの時間、外遊びの時間というように、あらかじめ決められたカリキュラムを一斉にやらせるのではなく、子ども自身が興味を持った教材を自分で選び取り、一人ひとりが好きなことに取り組んでいきます。先生たちの基本姿勢は『手を出さないで見守る』。自分の手を使って、自分でやりたがる子どもたちの成長欲求を妨げないことがポイントです」（滝瀬雅子社長）
　もちろん初めて手にするものや取り扱いに注意を要する教材には、先生が穏やかに付き添い手を差しのべていく。この時も「貸してごらん、やってあげるから」ではなく「やってみようね、手伝ってあげるから」だ。

　モンテソーリ教育のメリットとしては、自主性と集中力が育まれ、自分の頭で考え自己主張できるようになる、問題を試行錯誤しながら解決できるようになる、などが指摘されている。
　モンテソーリ教育を受けた著名人にはジェフ・ベゾス（Amazon.com創業者）、サーゲイ・ブリンとラリー・ペイジ（Google共同創業者）らがいる。なんとアンネ・フランク、それから藤井聡太九段も。NHKの元アナウンサー・久保純子さんは現在、ニューヨークでモンテソーリ教育の幼稚園の先生をされているという。
「日本の教育方針も、かつての一斉教育から一人ひとりの個性に光を当てる教育に転換され始めています。私たちが40年近く前から取り組んできた教育に、時代が追い付いてきてくれました」
　そう滝瀬社長は感慨深げに語る

　二つ目は認可、公立、社会福祉法人の保育所が多い中で、チャイルドタイムは株式会社であったということ。そのメリットを滝瀬社長はこう力説する。
「規制、基準に縛られないため、柔軟で迅速な対応ができます。必要だと思ったことを、すぐに実現できる点は他の保育所にはない強みです」

　エプロン、口拭きタオル、水遊び用タオル、布団を園が用意する、いわゆる手ぶら登園を1997年から導入していた。オムツは現在4園で実施、うち2園では費用の半額を園が負担している。
　認可園と違い資格者でなくても働ける点を逆手に取り、これはという人材を見つけ出して採用。研修制度も充実させた自社の育成プログラムで一から教育し、実務経験がなくてもブランクがあっても、みなりっぱな保育士に育ててきた。

　ICT（情報通信技術）の取り入れも早かった。保育・教育施設向けソフト「CoDMON（コドモン）」を導入し、園と保護者間の様々な連絡の一元化を図った。保護者は出欠・遅刻をワンタッチで申請できたり、スマホで連絡帳やプリントを確認できる。一方、インスタグラムを使って園の様子を日々、外部へも発信している。

　本社の入るビルには「八王子エンゼルホーム」がある。同ホームは仕事を持つ母親のために、通勤に便利な駅周辺に保育所を設ける厚生省（当時）の「駅型保育モデル事業」の記念すべき全国第1号の承認を受けて開所した。また1997年に開所した「八千代エンゼルホーム」は当時としては珍しいマンション内保育所の走りとなった。

　通常の保育園では正職員とパート職員は、仕事の内容がはっきりと分けられているケースが多いが、チャイルドタイムでは一貫して仕事内容では同等に扱い、パートの先生にも正職員と同じ質を求め、同様の職員教育を行ってきた。それがチャイルドタイムを、保育のプロフェッショナル集団へと成長させていった。今、若い力の活躍が目立つ。10人の園長は30代～50代。保護者世代の生活スタイルを理解できる人材の登用だ。
　保護者による送迎が難しい子どもの個別送迎サービスも行っている。福利厚生にも力を入れる。「八王子エンゼルホーム」では国家資格を持つヘルスキーパーを採用し、2023年6月から職員が休憩中に園内で無償マッサージを受けられるようになった。2024年からの保護者へのマッサージサービスの提供も検討中だ。

　　チャイルドタイムでは今、正職員・パートの先生を募集している。職場環境はこんな感じだ。
●子どもに寄り添った保育と働きやすい環境づくりを優先し、国の配置基準より多くの職員を配置。
●プライベートも大切にする職場環境で、残業無し。残業する人を評価するのではなく、時間を有効に使い業務をやり遂げる人を評価する。
●2022年度、有休取得率76％。100％をめざす。1週間のまとまった休みも取れる。
●休憩時間は園外に出られる。八王子エンゼルホームでは園内でマッサージも受けられる。
●職員で話し合い、ムリ・ムダ・ムラをなくしてノンコンタクトタイムをつくる。子どものいない場所を設けて事務の仕事に集中したり、休憩を取れるようにする。
●育休復帰100%。子育て中・介護中の職員は多様な働き方が可能。正職員の場合、月120時間、130時間、140時間、150時間、160時間などから勤務時間を選択できる。
●小学3年生までの看護休暇あり。子ども1人につき年5日。職員と小学3年生までのお子さんの予防接種費用の補助も行っている。
●介護休暇　対象者1人につき年5日。病気やケガ対応だけでなく、買い物や掃除対応でも休める。
●希望すれば自園や系列園に自身の子どもを割引入園させられる。
●モンテソーリ教師資格者に月3万円の手当を支給。
●20代から70代が、それぞれできることを活かし活躍する会社。
●子どもを尊重するには、清潔で、子どもから憧れを抱いてもらえるような格好を。ジャージ、ジーパンは禁止。

【会社データ】
本社＝東京都八王子市明神町4－7－3 やまとビル6Ｆ
☎＝０４２－６５６－２７３３
創業＝１９８４年３月
事業内容＝保育所の運営
https://www.childtime.co.jp