2023年03月07日
サンデー毎日「会社の流儀」掲載
価値のないものに価値を創る――
「地廃地再」をリードする産廃エキスパート
千葉企業㈱
千葉 久典 社長
2023年03月07日
サンデー毎日「会社の流儀」掲載
千葉企業㈱
千葉 久典 社長
大量生産・大量消費の繰り返しが生み出した膨大な廃棄物を「資源」ととらえ、リサイクルやリユースによって循環させる「サーキュラーエコノミー」。持続可能な社会に向けて世界レベルでSDGsの取り組みが進む中、この「循環型経済」と訳される新しい経済システムの担い手として期待を集めているのが千葉企業株式会社だ。
「中国が『廃棄物由来の資源物』の輸入規制を強化したことを皮切りに、これまで海外に依存してきた日本のゴミ処理やリサイクルは完全国内のクローズドな環境に置かれています。SDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)の指標を意識した投資も始まる中、自国で適切に廃棄やリサイクルを行う『地廃地再』の仕組みづくりが必要。その牽引役として道筋をつけ、真の『循環型経済』を日本に定着させることが当社の原点、使命だと思います」
と話すのは6年前に就任した千葉久典社長。母方の祖父が石油や固形燃料を販売していた「千葉商店」を創業してから60年近く培ってきた、同社の信頼とブランドを3代目のリーダーとして守り続けている。
1970年、事業拡大を図るために府中市で物流・貸倉庫業を開始した千葉商店は4年後に現社名で法人化し、一般・産業廃棄物収集運搬業者として中野区に創業。その後、事業を一本化するとともに東村山市に移転した同社は、廃棄物処理・リサイクルのプロフェッショナルとして民間企業を中心とするクライアントのニーズに応えてきた。
「気配りの外交でお客様と信頼関係を醸成してきた祖父の後を受け、堅固な財務基盤と収益構造を作り上げた母が当社の礎を築いた。私も、大規模災害など外的要因があっても立ち続けられる状態になってから新しいことにチャレンジするように教えられてきました」
と話す千葉社長。祖父と母の異なる経営スタイルを間近で見て育ち、異業種の企業に勤務した経験も活かしながら自身特有の経営リソースを蓄積してきた。
価値のないものに価値を創る」をテーマに掲げ、今年で創業50周年を迎えた同社が、これまでにリサイクルした廃棄物の量は43万㌧超。特に力を入れている廃プラスチックリサイクルでは収集からリサイクル、最終処分までワンストップで対応できるだけでなく、提携処分先との協力関係を活用した広範なサプライチェーンネットワーク、柔軟なリスクヘッジを実現する徹底したシミュレーションと危機管理など、オリジナルの強みを培ってきた。
そんな同社の何より大きな転機となったのが、東村山市から一般家庭の廃棄物収集を受注したこと。それまで民間企業から請け負う、23区内で深夜や早朝に行う仕事が大半を占めていた環境から、日中に地元住民から仕事ぶりを〝見られる〟ようになったのだ。
「常々『ゴミ屋』と言われてしまう業界のイメージ払拭に強いこだわりを持っていた母が社員の意識を変えたいと考えていたタイミングでした。入札に参加した時は『何としても受注しよう』と意気込んでいたのを覚えています。しかし、受注すれば行政サービスに準じた仕様や要望に応え、何より続けなければならない。肉体的にも精神的にも大変でしたが、社員教育に力を入れ、ISO14001も取得しました。間違いなく当社が大きく成長したターニングポイントです」
と、千葉社長は当時を振り返る。翌年には東村山市で家庭ゴミの戸別収集がスタートし、住宅街の細い道を走行しながら1軒ずつ個人宅の玄関先で廃棄物を回収する方式に転換。特定の集積所を巡回していた従来の収集方式とは異なり、運転への細かい配慮や挨拶など、社員たちの意識と行動は大きく変わったという。
現在は自治体と民間企業双方のクライアントの期待に応えながら、廃棄物の収集運搬からリサイクル、さらにはコンサルティングにまで業務領域を広げている同社。豊富な実績と専門性の高いノウハウ・技術が評価され、東京都が行う産業廃棄物処理業者の優良性認定制度で「産廃エキスパート」にも認定されている。
そして4月から、同社は廃プラスチックの国内完結リサイクルを実現するべく、本社に併設する新工場を稼働させる予定だ。
日本のリサイクル市場が廃棄物の焼却時に発生する熱エネルギーを回収・利用する「サーマルリサイクル」を主流としている中、廃プラスチックなどを分子レベルまで熱分解し、化学工業に必要な材料を作るための物質として再利用する「ケミカルリサイクル」に挑戦。廃プラスチックの原料化・再資源化など二次加工を担うプラント施設を完成させた。4年前から構想していたという千葉社長は、国内の約7割を占める「サーマルリサイクル」への依存度を引き下げ、比較的環境負荷が少なく元の製品の原料として再利用する「マテリアルリサイクル」と「ケミカルリサイクル」の3つをバランス良く強化することが真の循環型社会を実現に導くと考える。
また、SDGsや地域貢献活動などにも積極的に取り組む同社。千葉社長は年に一度、全社員と面談するなど社員の教育と意識向上を促すとともに、サーキュラーエコノミーの未来を担う若手人材を確保するため、2024年度から新卒採用を始める。ドライバー職でもペアを組むなど連携が不可欠な現場で活躍し、同社をさらに魅力的な会社に成長させるエネルギーは「人が好き」な人材が集まり、育つことだという。
「社員一人ひとりが自発的に〝選ばれる会社〟を考え、意見を言える場を提供することも私の役目。廃棄物処理事業を『若者が希望や誇りを持てる仕事』に変えるためにも、サーキュラーエコノミーを定着させて日本のSDGs達成に貢献したいですね」(千葉社長)
【会社データ】
本社=東京都東村山市廻田町1―2―17
☎042―306―2183
設立=1974年12月
資本金=2001万円
従業員数=45名(パート・アルバイト含む)
事業内容=使用済みプラスチックのリサイクル事業、事業系廃棄物の定期収集事業、粗大・臨時業務事業、行政委託収集事業
https://www.chibakigyo.co.jp
㈱光英科学研究所
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