2023年04月04日
週刊朝日「Challenge 2023」掲載
㈱クラタ・テクノシステム
倉田 公一 社長
赤、黄、青、白、黒――様々な色で染めあげ美的空間を創り出す塗料には、もう一つ、モノの保護という大事な使命が課されている。 株式会社クラタ・テクノシステムは、社会インフラの保護、長寿命化にこだわった特殊塗料のメーカーだ。塗料販売会社を退職した倉田公男会長が創業して、今年22年目を迎えた。 補修用に特化しているのが特長で、創業時からの主力製品はシリコーン100%樹脂塗料「バッファーコート」。金属にもコンクリートにも対応でき、防水性と防食性に優れている。
「シリコーンはゴム塗膜のため、柔らかく追従性が高い。温度によって伸縮する金属にも適しています。施工が難しい箇所にも塗ることができます。2~3工程で作業は完了しますから、トータルでのコストメリットが期待できます」(倉田公一社長)
防錆性に優れているとされるシリコーン。東北大学が南房総市にある同社の実験場を使い、その仕組みを理論的にも追究し、昨年論文発表へと結実させた。 8年前からはシラン系含浸材「ディープインシラン」を発売している。コンクリート構造物に染み込んで表層部に高密度の疎水層を作り出し、劣化の要因となる水分や塩化物イオンを遮断。ただし水蒸気は透過させ、内部水分を調整する優れものだ。クリーム状のため一回の施工で標準塗布量を満たし、上向き面、垂直面にも塗りやすい。
さらにこの4月には、無溶剤型のシラン系含浸材「ペネトラントシラン」が発売された。 「低粘度でコンクリートへの浸透が早く、施工が容易です。シリコーン樹脂塗料や亜硝酸系防錆材との組み合わせで耐候性もさらにアップします」 倉田社長の説明は続く。NEXCO中日本ハイウェイエンジニアリング名古屋と共同研究で、ペネトラントシラン塗布後さらにバッファーコートNSを塗布する試験を実施したところ、長期における防錆性、撥水性、柔軟性、基材密着性、水蒸気透過性のある塗膜が得られたという。 同社ではこの度大阪市に開設するCSP事業部で、シラン系2製品の販売に注力していく。
防食効果を発揮するバッファーコートの塗装作業
倉田社長は11年前、父である会長に請われ、日本大学を出てから20年間勤務した文具大手のゼブラを退職した。在社中、グループ会社の管理職まで務めた倉田社長を待っていたのは、取引先の塗料会社への出向だった。といっても工場の下働きで、作業着は毎日塗料まみれ。一年半の修行を終え会社に戻ってからは、父を支えた。昨年9月、満を持しての社長就任だった。
「父は信長タイプですが、私は家康です。周りの人たちを信じて協力を仰いでいくしかありません。そのための組織づくりを進めます」 確かな後継者の下でクラタの第2章が始まった。
橋梁にディープインシランを塗布
【会社データ】 本社=東京都練馬区高松4-21-17 ☎=03-3926-4010 設立=2001年11月 事業内容=特殊機能性材料の開発・製造・販売 https://www.kurata-techno.com
㈱クラタ・テクノシステム/倉田 公一 社長/『注目企業オンライン』は、各分野における優良企業を独自に取材し、トップインタビュー形式でご紹介しています。
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