2021年02月09日
サンデー毎日「会社の流儀」掲載
忠恕の心を体現する事業用不動産賃貸会社
「三方良し」と250棟の実績で地域に貢献
永田不動産
永田 勝彦 社長
2021年02月09日
サンデー毎日「会社の流儀」掲載
永田不動産
永田 勝彦 社長
今年のNHK大河ドラマの主人公として脚光を浴び、新たな一万円札紙幣の肖像画にも採用される渋沢栄一。生誕の地として活気づく埼玉県深谷市の暮らしと産業を支え、地域と共に発展を続けているのが永田不動産株式会社だ。
「創業から50年以上の歩みを振り返ってみると、そこには常にたくさんの先輩方や仲間たちの支えがありました」
と話すのは、1968年9月に同社を創業した永田勝彦社長。大手証券会社での勤務を経て、家業の酒屋を継いだことが経営者としてのルーツだという。
「謙譲の心・謙虚な心・尊敬・感謝・反省の〝五省〟を大切にしながら、周囲の方々から頼まれた事は何でもやりました」
と話す永田社長が5人兄弟の末子でありながら家業を継承した背景には、早くに主人を亡くし、女手一人で店を切り盛りしていた母君への愛情があった。
その後、持ち前のバイタリティー溢れる行動力と人懐っこさで忽ち酒屋を繁盛させた永田社長は、地域の催しなどでも裏方として献身的に活動。その姿が周囲の信用を着実に勝ち取り、若手でありながらも地元の「年配衆」に引き立てられるようになったという。
やがて、懇意にしていた不動産会社からの勧めもあって免許を取得し、事業の軸足を徐々に不動産へとシフト。当初は売却益によるキャピタルゲインで収益を確保していた永田社長は10年後、先達からの指導・鞭撻を受けながら、より堅実な経営基盤を構築するために自ら土地を所有し、賃貸収入によるインカムゲインを中核とする現在の事業形態へと転換したのだ。
酒屋を営む当時から培ってきた地元での信頼とネットワークを生かしながら倉庫や店舗、工場の入居希望者に質の高い物件を貸し付けする中、やがて日本経済は〝バブル〟へと突入。多額の融資を打診するため、永田社長の元にも数々の銀行が訪れたという。
「実際、当時500億円ものコミットメントライン(融資枠)を作ってきた銀行もありました。しかし、万が一のことを考えると、とても使いきることは出来ませんでした」
と、永田社長は当時の心境を振り返る。
そして現在、同社は100㌫近い入居率を誇り、「ソーコのナガタ」で親しまれ続ける貸倉庫業をはじめ、店舗や工場、マンションを合わせて実に250棟を所有している。事業用不動産のエキスパートとしてクライアントからの期待に応えるだけでなく、堅実経営と地域貢献の姿勢を貫く同社は、納税額でも常に市内トップクラス(東京商工会議所調べ)を維持するなど、地元に欠かせない企業に成長した。
そんな同社が仲介会社をはじめとするクライアントから「永田の物件なら顧客が入る」と、絶大な信頼を得ている要因がリノベーションだ。一つ一つの物件に丁寧なリノベーションを施す背景には、滋賀県をルーツに持つ永田家が代々受け継いできた「近江商人」の心得がある。人に優しく、エンドユーザーの企業を大切にする「三方良し」の精神が同社の社風として浸透し、物件の売り手と買い手だけでなく、「世間良し」も体現しているのだ。
「常に〝自分たちが生活するなら〟と考え、入居する方々にとって使い勝手の良い物件しか提供しません。必ずピカピカな状態にしてからお貸ししています」
と話す永田社長は現在、市議会議員として4期目を務めている。清廉潔白な人柄で「知仁勇」に優れ、「坂東武士の鑑」と称される畠山重忠公の顕彰や「川本公民館」の早期着工に寄与。公益社団法人埼玉県宅地建物取引業協会・埼玉北支部の相談役や、「深谷花火大会」実行員会の最高顧問、川本町議会議長、ふかや市商工会理事などを歴任し、地域の活性化をリードしている。
関越自動車道花園ICを降りると目に飛び込む、整地された広大な土地は永田社長が深谷市から相談を受け、早期開設のために尽力した「(仮称)ふかや花園プレミアムアウトレット」の用地。深谷市が辺り一帯の農家から土地を借り受け、国内でアウトレットモールを展開する大手不動産デベロッパーに貸し出した大型商業施設は、2022年秋にオープンする予定だ。
このアウトレットをはじめ、自動車や食品のメーカー、飲食チェーンなど大手企業が都心からアクセス良好な土地を求めて続々と深谷市に移転。地域の発展に呼応するように、同社の業績もさらに大きく上昇する見通しだという。
「今年は深谷市周辺でもコロナ禍の影響は大きく、『このままでは商売が続けられない』と悲鳴を上げる店舗などが出て来ています。当社はそのような店舗が所有している土地と建物を購入し、物件を貸借するリースバックを行っています」
と、コロナ禍に創出した新たな事業について話す永田社長。店舗側は土地・建物を同社へ売却することで資金を手にするだけでなく、貸借物件へそのまま入居できる。看板を替えることなく、これまで通りに店舗の営業を続けられるメリットは非常に魅力的だ。
しかし、大規模な事業用不動産賃貸を多く手掛けている同社にとって、リースバックの事業は決して主業務ではない。利益の追求だけでなく、これまで支えられてきた仲間や地域に誠意を尽くすという「忠恕(ちゅうじょ)(真心・思いやり)の心」を体現しているのだ。
「資本主義の父」として日本経済の礎を築いた渋沢翁が生涯の規範とした信条を貫き、丁寧で親切な仕事を続ける永田社長。工業団地を司る通称「永田通り」に象徴される数々の物件を巡れば、地域を支える同社の存在感が実感できる。
【会社データ】
本社=埼玉県深谷市田中2542―1
℡=048―583―2095
創業=1968年9月
売上高=16億円
事業内容=貸倉庫業、建築工事など
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