倉持産業/倉持 一彦 社長

2021年02月22日

週刊朝日「Challenge 2021」掲載

鶏卵ひとすじ60周年。「平飼い卵」を生かした
新市場に挑戦する先進的養鶏・鶏卵商社

倉持産業

倉持 一彦 社長

 目にも鮮やかな濃いオレンジ色の黄身。養鶏・鶏卵商社として今年創業60周年を迎える倉持産業株式会社(倉持一彦社長)は、自社が生産する「平飼い卵」の黄身の色を「くらもちオレンジ」と呼ぶ。
 同社が採用・開発した「多段式平飼い」の鶏舎には、世界でも例を見ない独自のアイデアが詰まっている。餌を食べる場所、水を飲む場所、砂遊び場、卵を産み眠りにつく巣箱のそれぞれの設置位置を工夫することで、各段を自由に移動できる鶏の運動量はケージ飼いの鶏の数倍に増える。ある専門機関の調査によれば、ケージ飼い1日4~5000歩に対して平飼いは、1万5000~2万歩という運動量の違いがあるという。

 自由度が高くストレスのない飼育環境で暮らす健康な鶏は、間違いなく「くらもちオレンジ」の黄身を持つ美味しい卵を産むことだろう。もちろん衛生管理も万全で、足元を簀の子状にして鶏・卵と排泄物の接触を完全排除。採卵鶏を取り巻く外部の危害要因を徹底的に排除している。
 ケージ飼いに比して1羽当たりの飼育スペースが広く、餌の消費量もケージ飼いの1・2倍に及ぶ「平飼い卵」の生産にはコストがかかる。同社では、消費者の嗜好の推移とコストのバランスを見ながら、自社の養鶏場で飼育する50万羽の内10万羽を「平飼い」飼育に移行し、増えつつある「平飼い卵」を求める消費者の声に応えている。

抗菌・消臭液「衛くん」や
くらもち「たまごパン」も

 一人当たり年間300個の卵を食べるという日本の鶏卵市場にあって、自社の養鶏場で日産40万個、契約農家から集荷した卵を合わせて毎日120万個の卵を出荷し、卵の安定供給の一翼を担う同社は創業60周年を迎える今、事業の多角化にも注力している。

 そのひとつが、大豆や大麦など穀物由来の酵素が主成分の抗菌・消臭液「衛(まもる)くん」の製造・販売だ。元々自社の衛生管理で使用していた消毒液を市販用に改良したもの。天然成分のため手荒れがなく、抗菌効果も5日間持続するという、衛生のプロが推奨する逸品で、同社ホームページを通じて購入できる。

 もうひとつが、たまごパンのベストセラーメーカー、長野県安曇野市の「ティンカーベル」とのコラボによるたまごパン「くらもちオリジナル」。「くらもちオレンジ」の平飼い卵を使用したたまごパンで、こだわりのある高級スーパーなどで購入できる。
「平飼い卵の美味しさをより多くの消費者の方々に知っていただき、徐々にケージフリーの比率を上げていきたい」
 と、社長就任20年目の倉持社長は意欲を語る。

「今年は深谷市周辺でもコロナ禍の影響は大きく、『このままでは商売が続けられない』と悲鳴を上げる店舗などが出て来ています。当社はそのような店舗が所有している土地と建物を購入し、物件を貸借するリースバックを行っています」
と、コロナ禍に創出した新たな事業について話す永田社長。店舗側は土地・建物を同社へ売却することで資金を手にするだけでなく、貸借物件へそのまま入居できる。看板を替えることなく、これまで通りに店舗の営業を続けられるメリットは非常に魅力的だ。

しかし、大規模な事業用不動産賃貸を多く手掛けている同社にとって、リースバックの事業は決して主業務ではない。利益の追求だけでなく、これまで支えられてきた仲間や地域に誠意を尽くすという「忠恕(ちゅうじょ)(真心・思いやり)の心」を体現しているのだ。
「資本主義の父」として日本経済の礎を築いた渋沢翁が生涯の規範とした信条を貫き、丁寧で親切な仕事を続ける永田社長。工業団地を司る通称「永田通り」に象徴される数々の物件を巡れば、地域を支える同社の存在感が実感できる。

【会社データ】
本社=茨城県常総市菅生町683-1
☎=0297-27-1131
創業=1961年8月
資本金=3000万円
事業内容=配合飼料・鶏卵・液卵・温泉たまご・動物薬品・畜産器具・環境資材等販売
http://www.kuramochisangyo.jp

 

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