2022年09月27日
週刊朝日「Challenge 2022」掲載
㈱ニイチク
山田 彰男 社長
黒毛和牛のスライス肉が、ショップチャンネルのテレビ画面いっぱいに映し出される。見事な霜降りだ。プレゼンテーターの言葉にぐいぐい引き込まれ、垂涎一歩手前で我に返ってゴクリと飲み込んだ。熱弁をふるっているのは株式会社ニイチクの山田彰男社長だ。たった一日で、3億5千万円を売り上げたこともあるという。カリスマゲストとして紹介されていた。
「別の番組では大手家電量販店とも提携し、店舗に間もなくうちの牛肉がお目見えします」(山田社長) 創業から86年、今なお発展しながら100年企業への道を歩む牛肉卸の老舗、ニイチク。その原動力は何か。山田社長は力説する。 「技術力です。牛肉には目(繊維の方向)があり、切り方を誤れば食感は全く変わってしまいます。この繊細な技術は機械ではどうにもなりません。私たちは食肉の技術集団を自負しています」
だから多少加工賃が高くなっても、ニイチクでなければというファンは多い。ある大手外食チェーンでは取引先のすべての卸問屋に、ニイチクの規格に合わせるよう指示を出しているほどだ。山田社長は自ら肉を切って社員に試食させ、日々技術を伝授しているという。肉の半分以上は生産者からの一頭買いで、それを内臓まで処理していく。 沖縄の石垣牛を全国に紹介したのもニイチクだ。
「おいしさの秘密は、島では一年中ビタミンやミネラルたっぷりの生牧草を食べられることです。脂質が少なく赤身の多い牛を育てています」(山田社長) 生産増を図るため、石垣島に広大な新牧場を開設する。ここでは種付けからの一貫生産が行われる。
山田社長が目利きした黒毛和牛肉
枝肉の脱骨作業。職人技の見せどころだ
社長の父で創業者の山田勝久氏は、新潟から上京し洋食屋でコックとして修業に励むも、取引先の肉屋に転職。2・26事件のあった年、食肉卸として独り立ちを果たす。時代と共に、社名も新潟畜産からニイチクへと改名していった。 早実時代はラグビーで鳴らした山田社長。早稲田に進学するも学生運動は激化の一途で授業もない。1年足らずで見切りをつけ、家業に専念することにした。
社長に就任して15年。ショップチャンネルでの販売や百貨店の通販・ギフト製品への注力など、コロナを始め社会情勢の変化に怯まぬ舵取りをやってきた。台湾の大手外食チェーンとの本格的な取引も始まった。 親戚筋で提携先の食肉卸ミート・コンパニオンとは、2025年を目途にホールディングスを設立する。東日本最大級の食肉処理場への経営参加も予定している。 「根本にあるのは、末端のお客さんに本物の牛肉をお届けしたいという意気込みです」(山田社長) なるほど。月の最終土曜日になると、一般客相手に卸値直売会を開催する理由がわかった。
【会社データ】 本社=東京都江東区東雲2-11-22 ☎=03-3529-4120 創業=1936年 事業内容=精肉卸、食肉加工 https://www.niichiku.com
週刊朝日掲載/株式会社ニイチク/『注目企業オンライン』は、各分野における優良企業を独自に取材し、トップインタビュー形式でご紹介しています。
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