2022年10月25日
週刊朝日「Challenge 2022」掲載
東信工業㈱
山口 裕央 社長
オフィスラウンジの壁を表彰状が埋め尽くしていた。工事施工を讃える東京都からのもので「最優秀」の文字が見える。それらに混じって日本赤十字社、日本盲導犬協会からの感謝状も。東信工業株式会社とはどんな会社なのか。
山口裕央社長の父・孝久氏が設立して今年で55年。当初は東京都の浄水場・下水処理場内の雑工事を手広く受注し、なんでも屋として重宝がられていた。父は小学生の息子達を現場に連れて行った。のちに医師となる兄は好まなかったが、山口社長はワクワクした。 大学を出ると、当然のように父の会社へ。現場に立ちながら積算の勉強を始めた。数年後にはその知識で入札に勝ち、現場作業の効率化を図れるまでに。 ある時、通常3日はかかる工程を1日で仕上げて見せた。それを知った父は「信用を無くすのは一瞬だ! お前は履き違えている‼」。烈火のごとく怒り狂った。重機で掘り返して、一から作業をやり直させたという。
山口社長が27歳の時、父は他界した。継がないという選択肢はなかった。新社屋を建てたばかりで9億円の借り入れがあったが、覚悟を決めてサインした。 これまでのように多種多様な工事に対応できなくなり、売上は急落。先代の技術力、偉大さを思い知った。このままでは将来はない。
思い切って、上下水道パイプラインの維持管理・耐震化と、経年劣化したコンクリート構造物の長寿命化に特化。そして他社が敬遠する難工事を進んで請け負い、一つ一つをきっちりとこなした。「困った時は東信に頼もう」という雰囲気を作り出すことに成功した。 難工事をこなすたびに技術力は高まり、信頼につながった。3年目には先代の頃の売上を抜くまでに。その後、6つの特許を取得し、その論文はスイスの学会でも認められた。今では東京都のよき相談役だ。
SCW-JAPANのゴミ拾いに参加。千葉県木戸浜にて
東信工業では「持続可能な建設業」を目指し、社員教育に力を注ぐ。 「まだ構想段階ですが、閑散期に開講する社内職業訓練校をつくりたい。ここでは新人だけでなく、中堅社員や高齢者再雇用で入社してくる方々も対象です」
社会貢献にも力を入れる。学生ボランティアと共に海と街のゴミ拾いを始めた。この運動を継続させるために一般社団法人化を提案し、発足したSCW JAPANを賛助会員として支える。様々な寄付活動に対しては今春、紺綬褒章を授与されている。 「いろいろなタイプの人が活躍できる会社です。半数以上の社員が文系出身。有給取得100㌫をはじめ、社員教育の充実と働き方改革の三つを併せた【TOSHIN STYLE】を実践します」(山口社長) 年内にはグループ会社3社でホールディングスがスタート、人材教育や人材紹介の企業も設立しグループの飛躍を図る。
社員と共にフットサルで汗を流す山口社長(後列右)
【会社データ】 本社=東京都足立区青井3-12-10 ☎=03₋3849₋5357 設立=1967年 事業内容=上下水道のパイプライン事業、コンクリート構造物の長寿命化事業 https://t-kk.jp
週刊朝日掲載「Challenge2022 」/東信工業㈱/『注目企業オンライン』は、各分野における優良企業を独自に取材し、トップインタビュー形式でご紹介しています。
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