220510 アトー㈱/山田 重満 社長

2022年05月10日

サンデー毎日「会社の流儀」掲載

「価値創造」を志し、生化学分野の研究支援で58年
分離・分析技術の進化を支え続けた裏方の立役者

アトー㈱

山田 重満 社長

 iPS細胞の作成や遺伝子解析など、現代のライフサイエンス・バイオテクノロジー分野の研究発展には目覚ましいものがある。そのバイオ研究の黎明期の1964年1月にミツミ科学産業㈱として産声を上げ、78年に現社名に変更して以降も含めて58年、一貫して生化学分野の研究や生産を支援する分析・計測機器を開発・提供してきたのが、10のマイナス18乗を意味する極小単位の「ATTO」から新社名を名付けたアト―株式会社だ。

 創業者の山田重満社長は早稲田大学法学部卒業後、叔父が経営する医療機械商社に入社。医療機器の営業マンとして東京大学医薬理農の各学部に自由に出入りする内、生化学の研究者達と懇意に。ある日、海外留学帰りの新進気鋭の薬理学教授から「これからは生化学の時代。欧米同様に、日本にも生化学に精通した専門的な研究支援企業が欲しい」との助言を受ける。その言葉を「天啓」と捉えた山田社長は間もなく独立を決意。当時の同僚と二人でミツミ科学産業を興す。

 当初から、蛋白質やDNAの分離・分析に用いられる電気泳動やクロマトグラフィー関連製品の開発に特化。「価値創造」の使命感で常に世界の先進的技術をチェック。濾紙からディスク、スラブゲルへと変遷する最新の電気泳動手法を導入して、研究現場の要求を満たす製品開発を続ける内、やがて「電気泳動のATTO」と呼ばれるようになる。

同社の地位を確立した電気泳動装置

 現在では、研究成果を左右する既製ゲルや試薬から泳動装置・画像解析装置までの生産体制を整え、大学、公的研究機関、製薬・食品・化学メーカーなどに供給。蛋白質の分析やDNAの塩基配列決定など生体関連物質の分離・分析研究製品の国産トップブランドの地位を確立している。

超微弱発光絶対値計測技術で
バイオ基礎研究・生化学を新たな地平へ

 よく似た社名の後発電子部品メーカーが大手に成長し、混同されるようになったことを契機に、「超微弱光計測技術で世界の最先端を行く」との山田社長の思いを反映する「ATTO」への社名変更を果たした同社。
 その歴史は、苦心して開発した新機軸が軌道に乗り新市場を形成し始めると、大手が同様の製品で市場に参入し、主導権を明け渡すという試練の連続だった。

「創業以来、最先端の生化学研究の現場と共に歩み、研究者個々の要求を満たす製品を開発してきた当社の技術は、その先進性故に真似されるのは宿命です。経営資源の乏しい当社が大手と渡り合うためには、常に先端技術の現場に触れていることが肝要。現在当社が30年来取り組んでいるのは、『蛋白質から細胞へ』の流れを加速する超微弱発光計測技術です。これにより『コロナウイルス』研究にも貢献できる新たな微弱発光計測製品が生まれました。さらに今年は分離性能を分子量一千万越えに拡大した世界初の電気泳動ゲルをバイオ研究者にお届けします」
 と、1935年満州生まれ、気骨溢れる87歳の山田社長は意気盛んだ。

遺伝子の働きを計測する微弱発光計測装置

【会社データ】
本社=東京都台東区元浅草3-2-2
℡03-5827-4861
設立=1964年1月
資本金=2400万円
事業内容=バイオ・生化学分野の研究支援機器の開発・製造・販売・サービス
https://www.atto.co.jp

 

サンデー毎日「会社の流儀」/アトー㈱
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