部屋を借りたいが、厄介なのは初期費用だ。敷金、礼金、保険料に保証料、仲介手数料も――。結局お金がなければ諦めろということか。

　いや、それでも「全然オッケー」と言ってくれる不動産屋が、西武新宿線の武蔵関駅前にあった。創業から55年の老舗、東和開発株式会社だ。岩﨑孝治社長によれば「２年以上住んで月々２５００円の会費をいただければ、入居時は１カ月分の賃料、共益費、会費だけです。退去時の原状回復費も不要です」とのこと。
　同社は武蔵関周辺から石神井、武蔵境、吉祥寺、高円寺、大泉学園、朝霞といったエリアでマンションの賃貸、管理、仲介、売買を手掛けている。自社所有のマンション13棟３１５戸の賃貸業が柱で、稼働率は常に95㌫以上だという。さらに２９０戸を管理受託し計６０５戸の物件を抱える

　地方から出てくる学生に人気なのが、何の準備もないまま入居できる家具付きプランだ。家電製品一式や寝具など約30品目が、割安価格で初めから部屋に付いている。入居後、月１万円ちょっとの24回払い。
　部屋のデザインは専属デザイナーが腕を振るう。最近人気なのは古民家風だという。消音装置付きの楽器を演奏できる部屋もある。オール電化で、上下水道は固定料金の割安設定。外部委託による24時間サポートも心強い。自社運営の物件紹介サイト「sumica」もなかなか好評だ。

　保育園児の頃から、創業者である父と仕事をするのが夢だった岩﨑社長。しかし父は、その日のために東京理科大で経営工学を学んでいるさなかに他界してしまった。卒業後は大手マンションデベロッパーへ。
　転機は29歳の時だった。東和開発の屋台骨が大きくぐらついた。東洋大キャンパス統合のあおりを受けて、１６０戸を誇る自社物件の稼働率が39㌫まで急落。この会社存亡の危機に実家に戻り、社長である母を支えることになった。

　仲介の不動産屋を１年間で２２００社回った。リフォームしたいがそんなお金はない。ではどうするか。思いつく限りのことはなんでもやってみた。そんな時、携帯電話の割賦払いを提案されてひらめいた。初期費用の分割払いに応用してみると、これが効いた。募集、宣伝にも工夫を凝らし、ついに稼働率は95㌫に。この時生み出したノウハウを駆使し後年、管理受託した都民住宅の稼働率を98㌫に上げてオーナーを驚かせた。

　岩﨑社長には夢がある。
「各事業部門を分社化して７人の社長をつくりたい。そのために自社・受託合わせ管理物件数２０００戸を目指しています」
　練馬区役所での不動産無料相談も引き受け、地域に尽くす岩﨑社長。いっそうの地域貢献のために、相続・事業継承のコンサル業務を来年の春頃にはスタートさせたい意向だ。

【会社データ】
本社＝東京都練馬区関町北４-４-17-２Ｆ
☎＝０３-３９２８-８８８１
創業＝１９６７年
事業内容＝不動産の賃貸、管理、仲介、売買
https://www.towa-k.net

週刊朝日掲載「Challenge2022 」／東和開発㈱／『注目企業オンライン』は、各分野における優良企業を独自に取材し、トップインタビュー形式でご紹介しています。