230530 ㈱エスアイジー/須田 治夫 会長

2023年05月30日

サンデー毎日「会社の流儀」掲載

世界の大手企業へ高精度な各種ギアを提供
創業80年目を迎える歯車メーカーの開拓者精神

㈱エスアイジー

須田 治夫 会長

 自動車や産業機械など、多くは見えないところで動力を発揮する歯車(ギア)は小型・大型、種類も役割も実に様々で、いずれも製造工程が多いことで知られる。中でも精密さを要する特殊な歯車は、1つ製造するために20種もの工作機械を要するという。

 静岡に拠点を置く株式会社エスアイジーは、精密歯車ほか様々なギア製造に必要な全工程の設備を持ち、高品質かつ緻密で生産効率に優れた社内一貫製造体制を確立。世界4大産業用ロボットメーカーの1つ、スイスのABB社やドイツの自動車部品製造大手・ZF社、アメリカ・SPXフローテクノロジー社らと約40年に及ぶ取引実績を持つ。

「歯車メーカーは限られた工程だけを担う企業も多いですが、全加工を手掛ける設備があることを前提とすると、どこも同じような体制になる。その中で私たちは、革新的な姿勢で設備投資に力を入れながら、常に幅広く対応できる生産体制を強みとしてきました」
 と話す須田治夫会長は、世界でも名を成す大手企業を顧客に、今や同社の売上6割を占める輸出事業を開拓・推進してきたキー・パーソンである。

歯車は15~20もの製造工程を経て出来上がる

 同社は1944年、須田会長の祖父によって創業。それまで米の販売を生業としていた祖父は、戦後の食料難に伴い、東芝機械(現・芝浦機械)の下請として歯車の製造をスタートした。
「地域の消防団長をやっていた祖父は元々、水中ポンプを自分で作ってしまうほど機械づくりが好きでした」
 と須田会長が話すように、ルーツには「モノづくりへの好奇心」が深く根差しているようだ。同社は株式会社須田鉄工所として54年に設立、東芝グループと共に着々と歯車製造技術の腕を上げてきた。当時まだ若手ではあったが、その技術力は十分に販路を広げられるものと確信した須田会長は、工作機械メーカーの大手・牧野フライス製作所へ売り込みを図る。

「当時、牧野さんは自社での歯車製造を検討していたところでした。『あれはできるか?これはできるか?』といろいろ尋ねてこられて、私たちはその全てを造ることができました。初代社長であられた牧野常造さんから『高価な歯車設備に投資することなくプラノミラーやベッド研削大型機を導入できたことは会社にとって大きかった』と言われた時はとても嬉しかったですね」
 と須田会長は目を細める。

世界が必要とする技術
社名変更への「想い」

 80年代後半になって、同社は輸出事業に参入した。
「日本の経済は4年間の好景気が来ると、その後2年間は不景気が続く循環があった。4年で稼いだものが次の2年でゼロになってしまうと、十分な設備投資ができなくなってしまう。これでは絶対ダメだと思った」
 当時専務だった須田会長は、その頃を振り返る。
「少量のギアで動く可変速モーターが出てきた当時は私たちも深刻な状況で、このままでは本当につぶれてしまうと思った」(須田会長)

 自社に十分な製造設備を持っていた同社は「American Machinist」(アメリカの工作機械業界紙)に広告を出稿。これを見たABB社やZF社など世界の大手企業が「本当にそんな工場があるのか?」と静岡まで見学に訪れたという。

「私自身も1年のうち90日は海外に行く生活が2年間続いて、要望を聞きながらとことん対応しました。外国人から最初の信用を得ることはとても難しいと実感しました」(須田会長)
 今に至るまで約40年間、その信頼をキープしていることから、同社の製品クオリティの高さが窺えるだろう。㈱須田鉄工所はその後、「スダ・インターナショナル・ギアワークス」の頭文字をとった「㈱エスアイジー」へと社名を変更。「インターナショナル」を謳うにふさわしい同社の矜持がさりげなく見えてくる。

製品クオリティは世界でも絶大な信頼を寄せる

危機感をもって
好機を拓け

 須田会長が3代目として社長に就任したのは94年。当時、日本には2社しかなかったといわれた米国製グリーソン社のカービングカップリングを導入したことにより同社には日本中から注文が殺到、納期遅れが日常化していた。これは絶対にダメだと須田会長は、まず工期の完全な把握と進行管理を徹底する体制へと改革を行った。
 さらに社内の製造設備を一新。同社はこれまで世界でもハイクラスの新機種を常時導入してきた。製造業において最新設備の導入は大きな武器となる。

 そして、高いクオリティと効率の高い生産性を維持するのは、設備の上に立つ「人」の存在だ。
「海外の一流企業では挨拶が活発で、皆が明るく楽しそうに仕事しているのを見てきた。些細なことですが、現場の人間には『生き生きとした環境』を大切にしてもらいたい」(須田会長)

 歯車は技術の革新によって、いつの日かそれに代わるものができるかもしれないという意味で衰退事業であると須田会長は捉える。しかしこれまで同社が大きく動いてきたその原動力に「危機感に対する挑戦」が挙げられる。地元の高校野球の監督経験もある須田会長は、そのことが会社経営に大変役立っていると話す。
「例えば2アウト、ランナー1塁でヒット&ランなど絶対にありえない事を仕掛けると、気の弱い子でも『どんな球が来ても打って良いんだ』とがむしゃらになって好機を招くことがある。同じ生産技術でも『私はここまで』と考える人がいますが、本当の意味で生産技術とは、幅広く自分で考えて自分で行動できること。そういう人になってもらいたいですね」(須田会長)

本社屋外観

【会社データ】
本社=静岡県駿東郡清水町久米田119‐1
☎=055-972-8888
設立=1954年6月
資本金=5000万円
従業員数=97名
売上高=15億5400万円
事業内容=各種精密金属歯車の設計・製造
https://sig-gear.co.jp

 

サンデー毎日「会社の流儀」 ㈱エスアイジー/須田 治夫 会長
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㈱エスアイジー/須田 治夫 会長

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