中央建設/渡部 功治 社長

2019年06月04日

サンデー毎日「会社の流儀」掲載

東京で新生した総合建設会社が70周年
テーマは人 そして全ては未来へ――

中央建設

渡部 功治 社長

政府が成長戦略の一つとして「高齢者雇用安定法」の改正案について骨格を発表するなど、労働人口の減少を補うためにシニア人材の活用が急がれる昨今。特に高齢化による人手不足が顕著に進む建設業界の中で時代に先駆けた取り組みによって〝人が集まる〟成長企業がある。今年で創業70周年を迎えた中央建設株式会社だ。

同社は、いち早く「70歳定年」を導入し、即戦力となる経験豊富なシニア人材の積極採用がマスメディアから注目を集めるなど、シニア人材の活用だけでなく、若者の採用にも積極的に力を入れている。4代目として2008年から指揮を執る渡部功治社長は「受身では時代に取り残される」と、常に未来を見据えた、いわば「未来型働き方改革」が大切だと捉え、関連法案の成立より前に自らが実行委員長を務める「働き方改革実行委員会」を創設。社員の側から社労士の話を聞くなど、肌感覚に基づく就労環境の整備を進めてきた。

「健康面を含め、人それぞれに歳の重ね方があり、愛情と感謝の気持ちで社員一人ひとりの人生と向き合った働き方を提示することは、経営者として当たり前。どんな会社で働ければ私の子どもたちが幸せになれるのか、という親目線で会社を作ってきました」(渡部社長)

1949年に愛媛県今治市で創業し、地元の公共工事を細々と請け負う建設会社として地道に業歴を重ねてきた同社だが、「平成の大合併」による予算圧縮など、地方の建設会社を取り巻く環境が大きく変化。先細りを予見した渡部社長は新たな活路を見出すべく決断する。「東京進出」だ。しかし、奇しくもリーマン・ショック直後の折、当初の2年間はまさに茨の道であった。

「頼る人も無く、鞄一つで耐えに耐える日々でした。それでも公共事業だけでは存続は難しい、やはり『東京』しかない。撤退は全く考えずに〝絶対にやり遂げる〟という強い覚悟を持って行動し続けました」
と、当時を振り返る渡部社長。仕事も人脈も、手応えもない「0」から「1」を生み出す苦労を味わう中で、心の支えになったのは家族の存在だったという。

敵は己にあり!
肌感覚の「経営力」

座右の銘は「敵は己にあり」。苦境の中で自ら殻を打ち破り、強靭な行動力で事業の拠点を東京へシフトさせることに成功した渡部社長は7年前、港区で事務所を開設した。昨年7月には本社登記も東京へ移し、名実共に「中央」の会社となった同社は大半を占めていた公共工事から、民間建築の元請やスーパーゼネコンの下請、新築・改修に拘らず、広域に対応する戦略へと事業転換を成し遂げた。

「某大物著名人の方から、自宅のリフォームを任せて頂いた時は感激しました。東京で生きていくための『命』を頂けたと思っています」(渡部社長)
 現在は、東京本社、四国支店、松山営業所、東北支店の4拠点を中心に全国へと活躍の場を広げている同社。建築・土木の工事や設計、積算、電気設備など全方位的に優れた技術とノウハウを備える総合建設会社として評価を高め、施工を担当した「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」は昨年、建築業界において極めて高い権威を誇る「BCS賞」(日本建設業連合会主催)を受賞した。

また、物件の品質管理を徹底する同社は、着工から竣工までの各工種・工程で検査を行う工事監理部や、より安心・安全な施工を促すために潜在的なリスクを洗い出すアセスメント管理室を社内に設置。現在の全社員110人体制からの増員を図る渡部社長は、こう例える。「私が目指しているのは大手・中堅ゼネコンの質とバランスを保ちながら、小回りも利く規模の従業員総数180~200名にした会社。まだ志半ばですが、山の形をキープしながら裾野を強くするためのピースを埋めているところです」

 15坪の一室に社員3名から始まった東京本社は現在広さ158坪、社員数は90名まで拡大。開業当初から一人で勝負に挑んできた渡部社長の「経営力」は肌感覚から育まれている。
「経営は生易しい事でなく綺麗事でもない、生きる力、命です。地方が衰退することや、今の当社が10で1を生むだけの会社ではなく『100で10を生み出す規模の会社』でなければならないことも肌感覚でわかる。バランスの良い組織づくりの実現のため、優秀な技術者が常に120人以上在籍する会社を目指して社員を増やすことは戦略として必須なのです。いわば人材の争奪戦です」(渡部社長)

「幸せ」と言える会社
人が集まるブランド力

「社員との無駄な垣根は必要ない。社員が困っていることに手を差し伸べなければなりません。私は、社員が幸せでなければ気が済まないのです」
と話す渡部社長。就任当初から始めた改革は、働き易さを追求したオフィスデザインから様々な手当・祝い金などの制度、心身の拠り所になるアメニティーセンターの設置など細部に至るまで行き届いている。

さらに、CSR活動も積極的に幅広く行っている。
「当社が大切にしているのは『人』で担う信頼と『技術』で創るブランド、『未来』へ進むビジョンです。100人を超える増員を果たし、青天井ではなく、しっかり見据えられる天井を自分たちで設けながら立ち位置を決めていきます」(渡部社長)

同社を題材にした『なぜあの会社には人が集まるか』(ダイヤモンド社)の出版も控える。「中央建設に入って『幸せ』と言える会社でなければならない」と、魅力ある会社づくりを実行してきた渡部社長の信念は確実に浸透し、同社のブランド力をさらなる高みへと押し上げていく。

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