240313 東亜グラウト工業㈱/山口 乃理夫 社長

2024年03月13日

サンデー毎日「会社の流儀」掲載

地域創生・地域再生の推進、目指すは「まちのお医者さん」
インフラメンテナンスの綜合ソリューション企業

東亜グラウト工業㈱

山口 乃理夫 社長

 元旦から激震が走った日本列島――。「災害大国」 で暮らす私たちの安全と安心を守るために防災・減災の街づくりが求められる中、インフラメンテナンスのエキスパート集団として国土強靭化に貢献し続けているのが東亜グラウト工業株式会社である。

 1958年の創業から70年代後半にかけて、グラウト(薬液注入)技術を駆使して地下鉄整備における地盤改良工事や漏水補修工事を数多く手掛けてきた同社。さらに、特筆すべきはその後の新市場開拓だ。

 高度経済成長期のインフラ整備全盛期(1980年代)に、「いずれメンテナンスの時代が来る」と予見(創業者:大岡伸𠮷氏)し、海外の先端技術をいち早く導入。国内トップシェアを誇る下水道管路更生工法(光硬化工法)がメインの「下水道管路メンテナンス事業」、並びに土石流対策や落石防止で活躍するリングネット工法や強靭ワイヤーネット工法を擁する同社の「斜面防災事業」は、いまや創業の地盤改良事業を上回る主力事業となっている。

 大岡氏の後を受け、7年前に就任した山口乃理夫社長は前職(積水化学工業)で培ったM&Aや業務提携のノウハウを駆使し、従来の3本柱に「コンクリート構造物メンテナンス」「上水道管路布設・管理」を加えた5本柱を確立し、「インフラメンテナンスの綜合ソリューション企業」への進化を牽引している。

 また、各工法で使用する材料や施工装置を取り扱う会社の立ち上げにも携わってきた同社は、工法協会の設立や全国的なパートナーシップを構築することで‶技術を普及させる仕組み〟を確立。半世紀の間に500件以上の特許を出願するなど、経営の柱として知財戦略を推進してきた。

「TMS(トータル・メディカル・システム)」を軸とする同社のパーパス

働き方改革が続々進行中
グッドカンパニーへ進化

 外気と比べ、どの季節でも温度が安定している下水の熱エネルギーを空調や給湯、融雪などに利用する「ヒートライナー工法」や、人工衛星を利用して漏水発生の可能性が高い箇所を検知する「ASTERRA」といった最新技術に挑戦し、昨年はシンガポールの会社を買収して海外にも初進出を果たした同社。次のステージに駆け上がるための新たな組織作りを進める山口社長は就任直後、「ビッグカンパニー」より「グッドカンパニー」を目指すため、社内に「働き方改革委員会」を設置した。

 工事・営業・管理の各部門から選出したメンバーが全国の支店や営業所にも出向き、現状の働き方について問題点と改善策をヒアリング。5カ月後に完成したおよそ80ページの報告書の提言を踏まえ、人事評価の見直しや人材育成の強化、職場環境の改善などが続々と進められてきた。

 この改革は社外からも高く評価され、SMBCグループが認定する「働き方改革のグロース企業」に6年連続で選出。徹底した育児サポートやスキルアップ支援、福利厚生の充実といった従来の取り組みに加え、山口社長は70歳まで活躍できる人材を育てるため、普段の業務とは離れた新たな視点や知識を学ぶ「越境学習」にも力を入れる。

SMBC働き方改革融資 実行証

「従業員は『お客様第一主義』を貫き、経営陣が『従業員第一主義』を徹底する『グッドカンパニー』になれば業績も上がる。一人ひとりが様々な学びや人との交流を通じて市場価値を高め、年齢に関係なく成長し続けて欲しいですね」
 と話す山口社長は「AIやDXから逃げてはいけない」と、45歳以上の従業員にリスキリングを促す取り組みも始めている。

パーパス経営と復活力で
「100年企業」に挑戦

多彩な工法で社会基盤を守る

本社(TMSビル)外観

 11月8日を「水循環に思いをはせる日」として記念日登録するなど、民間企業の域を超えて業界の発展に一石を投じた同社は、昨年開催された「第25回日本水大賞」で「経済産業大臣賞」を受賞。さらに、山口社長は日本企業の中で僅か1㌫しか存在しない「100年企業」を実現するために不可欠と考える「パーパス(志)」の共有と浸透を促している。正月には自身の思いを認(したた)めた手書きの年賀状を全社員に送り、2カ月に1日は社員研修の壇上に立つことを行動規範に掲げているという。

「ビジョンを語り続けることで、さらに風通しが良くなった。『100年企業』には揺るぎないパーパスと、時代の変化を先読みしてスピーディーかつ柔軟に対応する力、不測の危機に見舞われても事業を継続していく復活力(レジリエンス)があると考えています」
と語る山口社長が、自社の「パーパス」のカギとして掲げるのが「TMS(トータル・メディカル・システム)」。あるべき姿は、新設から維持管理・更新の時代に突入した日本のインフラ整備を支え、地域創生・地域再生を担う「まちのお医者さん」である。

「我々のビジネスは『まち』が存在してこそ成り立つ。診断から治療まで、安全安心な街づくりと人々の暮らしをトータルに支える『お医者さん』であり続けたいですね」(山口社長)
「同じ方向を向き、パーパス経営の一角を担っていけるか」をM&Aの基本方針にしている山口社長。現在、〝同志〟の数は12社にまで増え、各社の強みと総合力を生かした魅力的な企業集団を形成している。

 また、昨年10月にはミャンマーから高度外国人材を2名採用。山口社長が「しっかりと技術を学び、自国に戻ってインフラメンテナンスの市場を牽引して欲しい」と語るように、同社の志は世界の安全・安心な未来を創り出す。

【会社データ】
本社=東京都新宿区四谷2―10―3 TMSビル
☎03―3355―6200
創業=1958年6月
資本金=1億円
従業員数=グループ合計/426名(単体/161名)
売上高(2022年度)=グループ合計/238億4400万円(単体/95億4000万円)
事業内容=地盤改良・構造物メンテ事業、斜面防災事業、管路事業など
https://www.toa-g.co.jp

 

サンデー毎日「会社の流儀」東亜グラウト工業㈱/山口 乃理夫 社長
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東亜グラウト工業㈱/山口 乃理夫 社長

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