2021年04月17日
読売新聞 夕刊「Challenge Company」掲載
ITbookホールディングス
恩田 饒 会長
「DX(デジタルトランスフォーメーション)が進まなければ、2025年以降最大年間12兆円の経済損失が生じる」—-。 経済産業省が2018年9月に公開したDXレポートで「放置すれば2025年の崖に落ちる」と警鐘を鳴らした「2025年の崖」問題だが、DX推進を阻む大きな障害として横たわるのが、多くの企業・団体で長年運用されてきたレガシーシステムの存在だ。 社会インフラとして現存し、今も稼働し続けているこれらシステムの多くは、過去の技術や仕組みで構築され、最新テクノロジーの恩恵を受けるための拡張性や保守性が低減。改修を重ねての長期にわたる運用で技術の老朽化、システムの肥大化が進み、満身創痍で複雑怪奇なブラックボックスと化しているのだ。
「デジタルによる変革」を意味するDX推進が重要なファクターとなっている今こそ、強い覚悟と意思を以ってレガシーシステムの扉を開け、可視化・分析し、シームレスに活用しながらDXの軌道に乗せていくことが求められている。 「SmartTool」とは、ブラックボックス化したレガシーシステムの全方位的な可視化ドキュメントをスピーディーに作成するツールで、同社特許技術である「手繰り寄せ機能」により全てのロジックを一体化して表現することで可視化。DX推進のスピードアップを支援することが出来る画期的ツールだ。
作成された可視化ドキュメントを基に、同社コンサルタントが分析・最適化し、シームレスにDX推進に繋げていくのが、この分析・可視化サービスの要諦だ。 同社では、このサービスをOne Step毎の課金サービス型と月毎課金のレンタル型で提供しており、すでに大手企業、官公庁方面からの引き合いが相次いでいるという。
これまで、8府省、22独立行政法人や約200の地方自治体にIoT、AI等の新技術も活用した最新のITコンサルを提供してきた同社は一方で、地方自治体のDX推進への貢献にも力を入れている。 この程、IT化先進自治体と言われる埼玉県戸田市やITbookの支店がある静岡県藤枝市とDX推進に向けた包括連携協定を締結。また、東京都、荒川区とは協働でのデジタル化推進協議会設立の準備が進み、学校法人郁文館夢学園(渡邊美樹理事長)からは、「デジタルキャンパス化構想」に係るコンサルティング業務を受託している。これらは、デジタル庁の新設などデジタル改革を推進する菅政権の政策に呼応する業務で、同社のこうした取り組みは今後も各地方自治体に波及していくことだろう。 「日本の基幹システムのDX化は喫緊の課題。いち早く日本の隅々まで、改革を進めていかなければ」 と、同社グループを率いる恩田饒会長は、その施策の緊急性・重要性を語る。
恩田会長は東京大学卒業後1962年に大和証券入社。常務取締役、証券団体協議会常任委員長を歴任の後、96年にヘラクレス上場企業・KОBE証券社長就任、06年にはJSDAQ上場のブライダルジュエリー企業・シーマの社長に就任し、それぞれ見事に企業再建を果たした事業再生請負人とも言える経営者だ。 そして09年6月、75歳の時に最後の仕事として引き受けたのがITbookの再生だった。社長就任時3億円弱だった売上高を12年で80倍の256億円まで引き上げ、関連企業40社を擁する企業グループにまで育て上げた恩田会長の経営思想の根本には、「大きな夢、目標を持つ」「社員の士気を高める施策の実践」「企業としての高い倫理観」の3本柱がある。
「大きな夢を持てばそれを達成するための演繹的な方法論が生まれる。社員と共にその方法論に沿った最大限の努力を傾注する」 と語るように、恩田会長は就任直後から給与体系の刷新など大胆な構造改革を実践。その改革に呼応して、錚々たる大手IT企業から優秀なIT技術者達が集結し、これまでの急成長の原動力となっている。 平成時代の失敗の一因であるデジタル化で遅れをとる日本社会のDX推進の旗手として、同社に集まる期待は大きい。
[会社データ] 本社=東京都港区虎ノ門3-1-1虎ノ門3丁目ビル ℡=03-6435-8711 設立=2018年10月1日 資本金=9億円(マザーズ上場) 従業員数=2000名 事業内容=公共機関向けITコンサルティング事業等 https://www.itbook-hd.co.jp
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