2021年04月20日
週刊朝日「Challenge 2021」掲載
スクーナー
樋口 信行 社長
寿司ネタとしても人気の高い「甘えび」や日本の伝統食材である「鯨」などの販売で、業績を上げ続けているのがスクーナー株式会社だ。主力の北欧、カナダ、ロシア産のミネラル豊富な天然甘えびは、姉妹会社の株式会社洋星を通して卸され、日本の食生活に彩を添える。 「甘えびにたっぷり含まれるアミノ酸は、コラーゲンの主原料。健康や美容の観点からも魅力的な食べ物です」 と語るのは、御年85歳の樋口信行社長。甘えびを赤くするアスタキサンチンも医学・薬学・栄養学の分野で美肌との関連性が研究されている。 甘えびの輸入販売を始めて40年。大手の水産会社や商社を向こうに回して今日までこれたのは、頑固なまでに品質にこだわり、厳しいチェック体制を敷いてきた賜物だ。
同社の技術社員がトロール船に乗り込み、海の状況や船のコンディションを読み取りながら、商品の鮮度を見分け、前処理方法を指示し、凍結状態を判断する。現地スタッフにも品質管理には徹底した指導を行ってきた。さらに本社と現地が連絡を密にして市場ニーズを捉え、より良い状態で商品を提供していく。
樋口社長は東京水産大学を卒業後、大洋漁業(現・マルハ)の捕鯨部、海外事業本部勤務を経て独立。新たなビジネスを求めて調査に訪れた北欧で、水揚げされた甘えびの鮮やかな赤色に目を奪われた。ボイル加工を施し輸出すると聞いて、樋口社長は考えた。 「これを生のまま日本に運んではどうだろうか」
漁業関係者のアドバイスに従い、すぐさまグリーンランドに渡った。しかし契約の話は難航し、失意のなか日本に引き揚げることになったまさにその日。小さなトロール船のオーナーが声をかけてきたのだ。 当時40代の働き盛り。最後のチャンスに夢を託し、即決した。同社の社訓「夢とスピード」はこの体験がもととなっている。この時詠んだ歌が「我が力 試してみるか 架け橋に 緑島から 春風ぞ吹く」だ。 ただちに船を改造した。船体を真っ二つにして増築したのだが、水産大学で学んだ知識や大洋漁業時代の経験が大いに活きた。 後年、グリーンランドの外貨獲得に貢献した功績が認められ、自治政府から外国人初の最高名誉勲章「ナサナット・イン・ゴールド」が樋口社長に贈られた。
【会社データ】 本社=東京都中央区勝どき2-18-1黎明スカイレジテル西館3F ☎=03—5546-1246 設立=1978年9月 売上高=140億円 事業内容=水産物販売、水産技術コンサルタント http://www.schooner.co.jp
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