ケージーエス/工藤 良次 社長

2021年06月01日

サンデー毎日「会社の流儀」掲載

PC、スマホにつなげば文字情報が点字に
技術を共に学び合える企業パートナーを求む

ケージーエス

工藤 良次 社長

 ケージーエス株式会社が手掛ける「ソレノイド・アクチュエーター」とは、電磁石の磁力を利用して、電気エネルギーを前後動作や回転動作といった機械的運動に変換する機能部品だ。モーターに比べて構造がシンプルで、機械を直接駆動できる。ホームドアや電気錠、自販機、宅配ボックス、ATM等の内部機構部品として幅広く活用されている。
 同社は1950年代に着手したソレノイド製造で、一世を風靡。そして80年代に入ると、第2の柱となる視覚障害者用「点字セル」の開発に成功した。
 これを点字ディスプレーにはめ込めば、ピンが上下に動いて点字を表示。指でなぞり終えると次の文字群に切り替わる。ピンは弾力性があり、紙に比べ指への負担も少ない。パソコン、スマホなどに接続すると文字情報が点字で表示され、メールやインターネットが楽しめ、文書編集もできてしまう優れものだ。

 点字セルの動きを制御する方式に圧電(ピアゾ)型駆動装置を採用。小型軽量化、低価格を実現し、今や世界シェアの70㌫を占めるまでに成長した。さらに同社は、世界初の点図セルや点字ラベラーなども世に送り出している。
「視覚障害者の方が弊社の製品を使って、手軽に読み書きができれば生活がより便利になり、就労にも繋がるものと考えています」
 と工藤良次社長は、社会貢献への使命を語る。同社でも3名の視覚障害を持つ社員が、点字ディスプレーを駆使して活躍中だ。

企業コラボで
世界を唸らせたい

 工藤社長は同族経営ではない同社で、20年に渡り経理・総務・人事畑を歩み、2017年に社長に就任。就任時に掲げたのは「100年企業」だ。直ちに従業員の意識改革と経営陣の意識統一の指標を定め、組織整備に取りかかった。
 社員への公募で名称を決めたキャラクター「ソレイユ」をあしらった冊子には「広い視野で自分に足りないことを理解し、謙虚な姿勢で学び続ける」とある。自らの実践として、本を手放さず日々学び続ける工藤社長だが、社としても自社にない技術を共に学び合える企業パートナーを今求めている。

同社キャラクターの「ソレイユ」

 ソレノイドから生まれた点字セル技術を今度はソレノイドに還流させ、電気通信制御、センサーなどとの組み合わせで新技術を生み出せればと考えている。そしてニッチ、さらにはブルーオーシャンの開拓を模索していく構えだ。
「単体では力及ばずとも、中小企業が技術を持ち寄り、海外に出ていく。日本の工業はすごいなと、世界を唸らせるような仕事をしたいですね」
 と、工藤社長は熱く構想を語る。近頃は英会話の習得にも力が入る。工藤社長は本気だ。

【会社データ】
本社=埼玉県比企郡小川町小川1004
子会社=KGSフィリピン
☎=0493-72-7311
設立=1953年6月
資本金=1億円
事業内容=視覚障害者用福祉機器、ソレノイド製品等
https://www.kgs-jpn.co.jp

 

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