聖学院大学/清水正之 学長

2018年07月12日

週刊文春「学長インタビュー」掲載

自他共に認める“面倒見のよい”大学は
30周年を迎え、新たなステージを見据えた改革に着手

聖学院大学

清水 正之 学長

 埼玉県上尾市を流れる一級河川・鴨川のほとりに佇む聖学院大学。今年4月に創立30周年の節目を迎え、建学の理念「神を仰ぎ 人に仕う」のもと、キリスト教の精神を基本とした教育を軸に新たな2つの改革を始動させた。
 1つ目が学部学科の再編と新設。「これまで蓄積してきた教育ノウハウを生かし、社会に必要不可欠な人材の育成を志向しました」と、清水正之学長はその意図を語る。刷新された学部学科は以下の通りだ。

◯心理福祉学部(心理福祉学科)
 長らく学部の一翼を担ってきた旧・人間福祉学部の2学科を統合し、新学部として設立。現代人が抱える心の問題と福祉的課題について深く学び、年齢・性別・人種を超えて様々な立場の方を支え、弱者を護る道を探る。有資格の心理専門職やソーシャルワーカーなどの輩出に強みを持つ。

◯人文学部(児童学科、欧米文化学科、日本文化学科)
 旧・人間福祉学部から幼稚園・小学校教諭、保育士を輩出してきた「児童学科」を加えた。同学科では特別支援学校の教員免許も取得可能。欧米文化学科は実践的な語学力と欧米文化に触れ、日本文化学科ではグローバルな視点から日本文化の深淵を覗き見る。英語・国語科教諭や社会調査士など、広い視野と発信力を兼ね備えた人材が育つ。

◯政治経済学部(政治経済学科)
 政治・経済・法律・社会・経営・情報の6分野を横断的に取り組むことで、グローバルとローカル、両視点を養成。留学生の多くが在籍し、彼らとの交流も刺激に。公務員試験や一般企業への就職を念頭に置き、高い意欲で取り組んでいる。

 3学部5学科、講義の大半は30人以下で構成され、講師の指導が隅々まで行き届く仕様。他学科の講義を並行して履修しやすくしているため、より多角的な知見に触れられる。
 同大学ならではの取り組みとしては「アセンブリアワー」が挙げられる。多彩なプログラムが用意され、特に各業界で活躍する専門家を招いての講演は、普段は窺い知れない〝生の声〟を聞くことができる。また、講義以外でも教員の研究室を訪ねられる時間「オフィスアワー」では、資格取得や進路に悩む学生が足繁く通っている。

 改組初年度にもかかわらず、受験者数は軒並み上昇。国内のみならず、アジアを中心に国外からも入学希望者が集う。学習面での魅力が高いのはもちろん、各方面から支持される所以は2つ目の改革にも表れている。

「リハビリは人の心が通い合う、やりがいのある仕事です」と話すのは亀井一郎学長。和歌山県立医科大学を卒業後、脳神経外科医として数々の執刀経験を持つベテラン医師だ。
「外科医は病の患部を切って治すところまで。リハビリによって予想以上の回復をみせる患者さんを目の当たりにした時に、その重要性に気付きました」 

 リハビリテーションとは、Re(再び)habilitation(能力を獲得する)を意味し、怪我をしたり病気になった患者が再び社会生活を送れるようにするのが目的である。ここからは同学で学べる3つの専攻を順に紹介していこう。

 理学療法学専攻―理学療法士は、姿勢の保持や歩行など生活に必要な基本的な身体機能の回復を手助けする。後遺症により身体に障がいのある方に対し、科学的根拠に基づいた運動療法や物理療法を行っている。

 作業療法学専攻―作業療法士は、「服を着る」「食事をする」といった手足の動きの回復にとどまらず、誰と、どこで、どんな風に暮らすのか、その人らしい生き方ができるように援助するスペシャリストである。

 言語聴覚学専攻―言葉や聞こえ、飲み込みの機能を維持・向上させ、人間性の回復を支援。障がいのある子供から高齢者まで幅広くサービスを提供する専門家が言語聴覚士だ。
 加えて、〝園芸療法〟を学べるのも同学の特色。園芸療法とは植物等の栽培を通して、心身の回復を図るリハビリの一種。イネーブルガーデンと呼ばれる園芸療法用の庭を敷地内に用意しているからこそできるカリキュラムといえるだろう。

「リハビリの現場ではこれらを有機的に組み合わせることが必要です。そのため本学では、卒業後にチーム医療が自然にこなせるように各専攻領域だけでなく、他の領域についても学べる環境を整えています」
 また、同学周辺には河﨑グループの病院や福祉施設等が数多くあり一大医療圏を形成、早期臨床体験実習を可能にするばかりか、就職率100%を実現する一助にもなっている。

 さらに、急速に高齢化が進む時代背景に鑑み、今年4月から「認知予備力研究センター」を開設。認知症予防や認知力低下に有効となる認知予備力についても研究・発信していく方針だ。
「医の謙虚」が座右の銘と話す亀井学長。「知識、技術はもちろんのこと、思いやりといたわりの心を持った医療人を一人でも多く輩出することが当学の使命であり責任だと思っています」

タグラインを共有し
真の共生を伝えていく

「一人を愛し、一人を育む。」――。学生・教職員の協働で刷新された「タグライン」(共有する価値観)が2つ目の改革だ。開学以来1人ひとりと丁寧に向き合い、見守り続けてきた同大学最大の特徴〝面倒見のよさ〟が表現されている。実際に『サンデー毎日』(毎日新聞出版)の「進路指導教諭が勧める大学の中で面倒見の良い大学」に17年連続で選出された実績を持ち、外部からの評価も高い。

「評価していただけるのは嬉しいですし、当大学にお子様を預ける親御様に対して責任と自負を持って携わってきました。今後何十年経っても揺らぐことのない想いを、タグラインに込めています」(清水学長)
 同大学の面倒見のよさは入学前から始まる。「コミュニケーションスキル」「eラーニング」「学科プログラム」を中心とした準備学習を行い、本格的な講義を受ける礎を提供。また、住まいやアルバイトの情報など学外に関する相談にも手厚く対応している。

 入学後は様々な悩みを相談できる「学生相談室」や、進路・就職活動の際に心強い「キャリアサポートセンター」、教員志望の学生に特化した「教職支援センター」など、支援体制が充実。卒業後の活躍を見守りつつ、彼らの動向も随時把握しているようだ。
 学生への徹底されたサポート体制は、教職員たちが高い意識を持ち合わせていなければ不可能。10年前に教授として着任した清水学長は、彼らのモラルの高さに感銘を受けたという。
「時間をかけて優しく接し、時に厳しさを持って在学生を導く姿勢が印象的でした。研究者・運営者として大学畑一筋を歩んできましたが、建学の理念に基づく思いやり溢れる取り組みは、他大学には真似できないと思います」

 2015年4月から現職に就くと、従来の面倒見のよさを生かしつつ、学習面での充足に着手。先出の改革に加え、教育の3つの柱である知識・教養・体験を通じた社会で必要な「実践力」「対話力」「共感力」の養成を掲げ、教育方針を明確化した。この温かな学び舎から巣立っていく学生が、複雑多岐な現代社会で路頭に迷わないよう「各々の個性・能力を最大限に引き出した状態で送り出したい」(清水学長)という、同大学の親心がうかがえる。

 日本語学校の教職員が留学生に勧めたい進学先「日本留学AWARDS」で大賞を受賞するなど、以前から定評のある留学生の受け入れも「留学生センター」を設置して体制を強化。「埼玉からグローバルへ」を合言葉に、私生活でも日本人学生が留学生のサポートを自発的に行っている。
「ボランティアや被災地支援など、以前にも増して学生主導の取り組みが多くなり、彼らの成長を後押ししています。当大学としても、彼らの大きな伸び代のために環境整備を継続していきます。幅広い教養を基礎に、語学・ITなどの実学、そして当大学ならではの奉仕の精神を全て吸収し、『真の共生とは何か』を学んで欲しいですね」
「『誰かのために役立つこと』を志す学生が増えた」と、笑顔で話す清水学長。唯一無二のタグラインを理解・共有し、他者に対して実践できる人材が着実に育っているようだ。

【大学データ(問い合わせ先)】
埼玉県上尾市戸崎1―1
☎=048―780―1707
設立=1988年4月
学生数=1871人
学部=3学部5学科(心理福祉学部【心理福祉学科】、人文学部【児童学科・欧米文化学科・日本文化学科】、政治経済学部【政治経済学科】)
http://www.seigakuin.jp

 

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