関西医科大学/友田幸一 学長

2018年06月28日

週刊文春「学長インタビュー」掲載

次代の医療に向けて変革を続ける
創立90周年を迎えた医療系複合大学

関西医科大学

友田 幸一 学長

 大阪・京都間を結ぶ京阪電車の枚方市駅を降りて数分ほど歩くと、すがすがしい青空に映える立派な建物が目に入ってきた。それが関西医科大学及び附属病院である。

 1928年(昭和3年)、大阪女子高等医学専門学校として創立され、1954年に現在の関西医科大学に改名し男女共学に。そして今年創立90周年の節目を迎えた名門医科大学だ。
「90年という長い歴史の道中、常に順風満帆であったかといえば必ずしもそうではありません。むしろ苦難の道を歩んできたといってもいいと思います」
 と話すのは、2017年4月に9代目学長に就任した友田幸一氏。

 あまり報じられることはないが、多くの大学病院が赤字経営となっていることは周知の事実。同学も今から10年少し前、大変な経営危機に陥り、どん底の状態にあったという。しかし、そこから業界内で語り草になる『奇跡の回復』と呼ばれるほどの復活を果たす。

 現理事長である山下敏夫氏(前学長)を中心に教育、研究、臨床と経営面で大胆かつ緻密な改革を断行。時には経費削減を図り、教職員に辛い思いをさせたこともあった。しかし、強いリーダーシップと教職員一人ひとりの努力が結実し、財務面において急激に健全化が図られたばかりか、今なお進化を続けているというから驚いた。

 2013年には、淀川と天野川に囲まれた緑豊かで広大なスペースに枚方学舎が完成。「全学年が学ぶキャンパス」「最新の研究施設」「最先端医療を担う附属病院」が同じ場所に揃い、長年の夢であった『真の学園』が誕生した。

 今年4月からは、医学部と協同しての医療人の育成を目指し、看護学部看護学科と大学院看護学研究科を設置。単科大学から医療系複合大学へと変貌を遂げようとしている。
「これからの大学には学生の自主性、主体性を引き出す教育が求められている」
と友田学長が話すように、同学では様々な教育設備・学習システムの充実を図っている。
「医学教育センターは昨年度からIR(Institutional Research)機能を備えた施設に刷新し、より上質の教育が提供できるようになりました。また、ICTを用いた本学オリジナル学習システム(KMULAS・カムラス)の応用によって、WEB上にアップされたシナリオを予習、復習することでより効率的に学習でき、余った時間をクラブ活動、研究室ローテーションなどキャリアアップのために有意義に活用し、個人の才能や個性に磨きをかけてもらおうと考えています」(友田学長)

 さらに、未来の研究者を育成する「研究医養成コース」には、毎年多くの学生が参加。大学院医学研究科には、研究者として必要な倫理観、ルールなどを学ぶ共通コースを設置し必修化するとともに、社会人コースを充実させ、働きながら研究を続けるためのサポート体制を整えている。

 そして、最先端医療の研究・臨床面においては、京都大学と連携して「iPS・幹細胞再生医学講座」「同・応用医学講座」を開設。同時に、附属病院では患者数の多さを生かして治験も行い、未来の医療を生み出す〝種〟を蒔き続けている。他にもゲノム医療、ロボット医療、人工知能によるデータ解析などの分野にも力を注ぐ。

 一方で、「世界に開かれた大学」を標榜し、「国際交流センター」を設置。留学生の受け入れ、研究者の招聘、奨学金の支援等を行っている。今後は医療先進国だけでなく、東南アジアをはじめとした発展途上国と積極的に交流を深めていくという。また、2021年の完成を目指して、国際交流センター・留学生の居室・患者家族の宿泊などホスピタルイン機能を備えた同学のシンボルとしてのタワー棟を建設予定。枚方市駅周辺で一番高い100㍍超のタワー棟を計画しており、その外観にも注目が集まりそうだ。

こうした取り組みも相まって、先ごろ発表された「THE世界大学ランキング2018年版」では、総合ランキングで801~1,000位に、アジア版では201~250位、国内では32位、西日本の私立大学では第1位にランクされ、また特筆すべきは学生・教員比率は世界第3位にランクインした。着実に国内外での評価を高めている証左といえるだろう。

「慈仁心鏡」の精神を持つ
最先端の医療人を育成

 次代に求められる医師像を友田学長は次のように話してくれた。
「急速なIT化によって、医学・医療の世界も大きく様変わりしています。豊富な知識と経験はもちろんのこと、デジタル機器の操作に優れた専門技術力も必要になってくるでしょう。そして何より大切なのは、患者さんの気持ちに寄り添えるコミュニケーション能力と患者さんの人柄、経済力、背景、ご家族などにも気を配れるヒューマニズムを併せ持った医師であるように思います」
 まさに同学の建学の精神「慈仁心鏡」、すなわち「慈しみ・めぐみ・愛を心の規範として生きる医人」を示しているといえよう。

 7月1日には創立90周年記念式典が盛大に執り行われる。8,200人を超える卒業生の内、全国の医療現場で活躍する約6,000人の熱い思いも詰まった素晴らしい式典になるに違いない。

 友田学長の座右の銘は「未知との遭遇」。スピルバーグ監督の映画では人類と宇宙人とのコンタクトが描かれていたが、果たして同学にはどのような未来が待ち受けているのだろうか。
「未知をゆく、道の先へ」―飽くなき挑戦を続ける関西医科大学の動向にこれからも注目していきたい

【大学データ(問い合わせ先)】
住所=大阪府枚方市新町2―5―1
☎=072―804―0101
創立=1928年6月
学生数=958名(大学院含む)
学部=医学部、看護学部
http://www.kmu.ac.jp

 

関連記事

  1. 松本歯科大学/川原一祐 学長

  2. 田園調布大学/生田久美子 学長

  3. 231026 大阪保健医療大学/石倉 隆 学長

  4. 桃山学院大学/牧野丹奈子 学長

  5. 230928 関西医科大学/木梨 達雄 学長

  6. 東京女子医科大学/丸 義朗 学長

『学長インタビュー』は「週刊文春」「週刊朝日」などで当社が独自に取材した注目すべき大学の掲載記事をオンライン版として公開しています。

掲載をご希望の場合はこちらまで
s-comm@s-comm.co.jp

『豊島区長・高野区長日誌』発売中!

日本シニアリビングWEB STOREでご購入いただくと送料が無料です。

過去の記事