聖学院大学/清水 正之 学長

2022年07月07日

週刊文春「学長インタビュー」掲載

まだ見ぬ自分と出会える大学
学びたくなる、入ってから伸びる

聖学院大学

清水 正之 学長

「平和って何ですか」
先生の問いかけに、「戦争がない状態」という声が学生から挙がる。
「戦争がなければ平和と言っていいのでしょうか」
先生はさらに問いかける。そして貧困や飢餓、不当労働や搾取、男尊女卑のような差別や抑圧の制度化あるいは文化としての浸透――このような状態も暴力だとする平和学の捉え方を示していく。

「日本は平和ですか」との質問に、今度は学生の半分程度が挙手した。先生が13㌫の子供が貧困で、震災等による国内避難民が今も4万3千人以上。男女格差の実例を挙げジェンダーギャップ指数世界110位といったデータを紹介していくと、挙手した学生の顔が驚きの表情に変わっていく。

 さらに世界や日本に蔓延する暴力に、実は私たち自身も加担しているというショッキングな事実を、私たちが購入している衣料品や食料品を誰がどのような労働条件の下で作っているのかや、私たちの出す大量のプラスチックごみを途上国に輸出している事例などで明らかにする。

 グローバルな暴力の連鎖を断ち、より平和な世界を作るためには多様な学問の知見を借りて、今まで気づいていなかった問題に気づき、可視化することが大事であるとし、私たちは身近なところから、小さなところから、平和に貢献することができると訴えていく。学生の目に輝きが増す。
これは通常の授業の一コマである。聖学院大学の授業はおもしろい。先生たちが真剣である。

チャペルは大学のシンボル。入学式・卒業式を始め講演会やコンサートも開催される。

 ゼミナールを覗いてみても興味深い授業が目白押しだ。たとえば「映像文化論」では映画やアニメ、漫画、ゲームなどの表現方法を通して、社会的意味と現代文化を探求していく。「歴史・思想」では美術や文学、宗教や民俗のしきたりまで、人間がつくりあげたもの全てを「作品」と捉えて時代の中で読み解き、文化に向ける眼や日本をアジアの中で考える視野を養う。

 また「ソーシャルワーク論」は貧困や孤独死、障害者の就労、一人親家庭の生活支援など様々な福祉的課題を追究し、社会変革のためのアプローチ方法を学ぶ。「異文化間教育」では、日本で暮らす外国人家庭の子どもの発達と人間形成を考察し、教育現場でできることを導き出す。LGBTや人身売買を考えるゼミもある。
「本学は入ってから伸びる大学と言えます。魅力的な授業を体験して初めて学問のおもしろさにめざめ、さらに知りたくなる。その気持ちに応えてくれる体制が整っています」
 清水正之学長は自信を持ってそう答える。

 学部のカリキュラムにも特色がある。政治経済学部は政治学、経済学だけでなく社会科学全般にわたって学ぶことができ、多様な視点から社会的事象を捉える力を養う。心理福祉学部も同様に、心理学と福祉学という独立した学問を同時に学ぶことによって多面的な視点を養い、人と社会への理解を深めていく。有資格の心理専門職やソーシャルワーカーなどを輩出。修士課程は公認心理師受験に対応したコースとなっている。

 人文学部は3学科から成る。欧米文化を学び語学を習得して、グローバル人材を目指す欧米文化学科。古代から現代まで日本で発展した文化の諸相を考察し、それを担った人間への理解を深める日本文化学科。そして小学校英語教育科目が学べ、幼稚園・小学校教諭、特別支援学校教諭、保育士の輩出に実績を持つ児童学科(2023年度より「子ども教育学科」に名称変更予定)だ。

 地域との密接な関係を築いているのも同大の特長だ。公認心理師養成の実習施設を兼ねる心理相談室は地域に開放され、地元の方々が相談に訪れる。埼玉県内12市町村と包括協定を結び、大学の授業を活用して公務員の再研修を行ったりもしている。SDGs活動を教育課程で生かすために発足させたサステイナビリティ推進センターも、地域連携の推進に一役買っている。
「生きた専門知を大学は求められています。学んだことをボランティア活動などで還元し、学生のうちから社会に関わっていく体験が重要です。地域連携はそのためのよき実践の場なのです」(清水学長)

 国際色も豊かだ。学生の1割を留学生が占め、キャンパスはそのまま国際交流の場でもある。海外提携・認定校は5カ国13校を数え、多彩な海外研修プログラムも魅力だ。

聖学院大学では毎日が異文化交流

面倒見のよい大学に
20年連続選出

 聖学院大学はキリスト教の精神に基づいたミッションスクールである。教育方針「一人を愛し、一人を育む。」を体現した取り組みは、面倒見のよい大学との評価を確立させた。『サンデー毎日』(毎日新聞出版)の「進路指導教諭が勧める面倒見の良い大学」に、20年連続で選出されていることからもわかる。
「手取り足取りの世話をするのではなく、学生自身の〝気づきと行動を促す〟ために寄り添い、力を発揮できる環境を作ることが、本学の考える面倒見のよさです。学生自身が社会に出た時に、面倒見のよい人だと言われるようになってほしいと思っています」(清水学長)

 同大の面倒見のよさは入学前から始まる。コミュニケーションスキル、eラーニング、学科プログラムを中心とした「準備学習」で基礎力を習得させ、実際の授業に備える。一方、学生生活を始めるに当たっての住まいやアルバイトの相談にも手厚く対応している。
 入学後は様々な悩みを相談できる「学生相談室」や勉強に関する指導を1対1で受けられる「ラーニングセンター」、進路・就職活動の際に心強い「キャリアサポートセンター」、教員志望の学生に特化した「教職支援センター」などなど、支援体制に抜かりはない。

 清水学長は言う。
「これからの大学にとって必要なものは、学生自身がどこまで到達したかを可視化できる学修者本位の教育システムです。その構築のために今年、教育開発センターを発足させました。経済面も含めた学生生活全般を応援する学生本位の支援体制もまた必要です。こちらも今、学生エンパワメント推進システムの構築を急いでいます」
 最高の状態で新入生を迎える体制が整いつつある。来年は母体の聖学院創立120周年、聖学院大学創立35周年の節目の年を迎える。神聖なチャペルに来秋パイプオルガンが設置され、気高い音色を響かせる予定だ。今、ホームページではオープンキャンパスの予約を受付中である。

「大宮駅」から1駅、自然豊かなキャンパス

【大学データ】
住所=埼玉県上尾市戸崎 1-1
☎=048-781-0925
創立=1988年
学生数=2294名
学部=政治経済学部、心理福祉学部、人文学部 欧米文化学科、日本文化学科、児童学科(2023年度より「子ども教育学科」に名称変更予定)
https://www.seigakuin.jp

 

 『学長インタビュー』は全国の注目すべき大学や各種専門学校を独自に取材し、トップインタビュー形式でご紹介しています。

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